サジーの種子は卵形で硬く、黒茶色です
自分が移動することのできない植物にとって「種子」というのは生育場所を遠くへ広げることができる唯一のアイテムとも言えます。
種子の散布方法には
- 風や雨によって散布する
- 実を食べた動物によって運ばせる
二つの方法が一般的です。
種子がその木(母体)から離れて移動し、新しい自生地をみつけることを種子散布 (seed dispersal) といいます。
- どんな形で運ばれるか
- どのように運ばれるか
は多様で、果実や種子の形態的多様性と密接に関わっています。
サジーなどの植物は気の遠くなるような長い年月を経て「自分が生き抜くための最良の散布方法」をアップデートしていくのです。
サジーの種子は鳥に食べられ、運ばれます
サジーは11月~2月の冬の間ずっと実を落とさず、鳥に食べられるのを待ちます。
「冬には栄養分になる果実が少ないので鳥に食べられるチャンスが多くなる」
このこともサジーが冬場の過酷な状況でも実をつけたままいる理由の一つだと考えられています。
サジーの種には変わった特徴があります。食べられた種が鳥の体内で「通常の何倍ものスピード」で成長するのです。
廃棄物として地上に落ちた後、早く芽を咲かせるために身に付けたものでしょう。
サジー種子のオイルは、高値で取引される貴重な栄養素を含んでいます
ゴマを少し太らせたようなサジーの種子。
それがどのくらい希少なものかというと
「サジー果実900万個(約1t)からたった60kgしかとれない」
のです。
その種子には二種類の重要な栄養素がぎっしりと詰まっています。
それは
- 美容成分豊富な種子オイル
- ポリフェノール
です。
サジー果実1000kgからたった60kgしかとれない種子。
さらにその種子から3キロしかとれない貴重な脂肪酸を含んだ種子オイル。
α-リノレン酸を多く含むため、ダメージ肌の回復にも効果が期待される種子オイルが、美容業界で高価で取引されるのも無理はありません。
皮膚の修復を助けることから、軟膏の原料にも使われています。
もう一つの栄養素ポリフェノールは生活習慣病に良いとされる栄養素が多く含まれています。抗酸化の分野で大きく期待されています。
なかでもフラボノイドは「酸化し、老化する体をまもる抗酸化力」が注目されています。
サジー種子のオイルは、オメガ3系脂肪酸や植物ステロールなどを豊富に含んでいます
オメガ3脂肪酸。
ちょっととっつきにくい感じの栄養素ですよね?名前に「脂肪酸」なんて付いてるので「太るの?」なんて考えてしまいます。
オメガ3脂肪酸は体内のさまざまな機能にとって重要な「多価不飽和脂肪酸」に属しています。
耳馴染みのあるところではEPAやDHAがあります。
健康食品などの成分で少し有名になってきています。
私たち日本人が昔に比べて食べなくなった脂肪が多い魚(サケ、マグロ、青魚)や甲殻類(カニ、カキ)のような海産物に含まれているもので、不足気味な栄養素です。
魚だけではなくてセイヨウアブラナ、大豆、亜麻仁油にも含まれています。
味がかなりキツイので食用としてはなかなか浸透していませんが、健康に気を使う人の中ではかなり重要な栄養素といえます。
オメガ3脂肪酸については別の機会に詳しく調べてみます。
サジー種子のオイルに含まれるオメガ3系脂肪酸は心疾患が原因で死亡する可能性を低くする??
魚や甲殻類などの海産物をを多く含む食事でオメガ3系脂肪酸を多くとってる人(週に一回以上海産物を食べる人)はあまり食べない、あるいは全く食べない人と比較して心疾患が原因で死亡する可能性が低いとも言われています。
魚が健康にいいことはわかっていても、なかなか食べる機会がないし、案外高価だったりします。
サジーの種子に多くのオメガ3系脂肪酸が含まれているという事実は、魚嫌いの私たちを救ってくれるかもしれません。